これ以上ないってくらい高揚しているのが自分でもわかる。


だって目の前にあの人がいる。



届かない恋だと思っていたのに、なんの巡り合わせか、こうして同じ空間に入れるようになって、私の存在を認識してくれる。

話しかけてはくれないけれど、邪険には扱われない。
適度な線引きに、

たまに救われて、
たまに打ちのめされる。

きっと私があの人の眼に映ることはない。

ずっと遠くで見ていることができたらよかった。
そうすればこんなに次々に欲が湧き上がることはなかった。

いつものように、彼のいる場所に私は入りこんで、そして静かに立ち去る。
そうしようとしているときだった。

いつもと違ったのは、私が翌日に大事な試験を控えていたからかもしれないし、朝の占いで一位だったからかもしれなかった。

私と彼を合わせてくれた友人が、直接彼と話せるように仕向けてくれたのだ。

緊張でガチガチに固まって友人の腕を話せない私に、彼はキョトンとした顔を向けた。
私はなぜかこんにちは、と挨拶をして、彼はその顔のまま頭を下げた。

友人は私の様子を察して、彼に話を持ちかけてくれた。

明日、この子大勝負があるのよ。

彼は、合点がいったという顔をして、頷いた。

私の気持ちなどというものは既にばれていて、彼は少し困った顔をしながら、いつも私から少し距離を取る。

今回も、きっとそうなのだろうと、

それでも一言何か声をかけてくれたらいいなと、

私は気づかず友人の腕を握る手を強くしていた。

痛いって。

そう言って苦笑いする友人が、私の手を外して、私を一人立たせる。
完全に独りになった私は、彼の一挙手一投足を注視して、ただ待った。

気分はとても高ぶっていた。

彼はしばらく考える素振りを見せてから、少し困ったように笑った。

じゃあ、これをあげる。

そう言って、彼は自分の腕に巻いているブレスレットを私に差し出した。

呆然と見ていると、私の手首を掴んで、わざわざそれをつけてくれた。
そうして私の顔を見た彼は、あからさまにギョッとした顔をした。

私の視界はぼやけだして、頰には生暖かいものが伝っているのがわかった。

ありがとう。

ちゃんと声に出せたのかはわからない。私はひたすらにお辞儀をしていた。
見る人によっては謝っているように見えたかもしれない。

みるに耐えかねた友人が私の腕を引いて、彼の前から去らしてくれるまで、私はずっとそのままだった。

きっと彼には呆れられていることだろう。

それでも、手首にあるひんやりとした感覚を意識するたびに、嬉しくて、ひたすらに嬉しくて、私はポロポロと泣いていた。