かくして、専門家から恋の心理学を学ぶことになりました。敷島睦美、二十七歳。
柏葉さんが暇潰しと言うなら、こっちも暇潰しで教えてもらえばいいかと思ったし、プロが教えてくれるモテ技に興味は湧いた。
別に大瀬さんに実践しなくても、今後の人生でいつか役立つかもしれない。
「そういう、最初から勝てないイメージを持ってちゃ、絶対勝てないよ」
初めてのレッスン日、早速ダメ出しをくらった。
「自己暗示ってのが、何をするにも一番の基本で、一番大事なんだからね。毎朝、一日が上手くいくイメージをすること。イメージのなかで、大瀬さんといい雰囲気で会話して。イメトレってやつね。いい? 必ずだよ」
ちなみに柏葉さんの教えは、ちゃんとノートに取って、声に出して読み上げなくてはいけない。
そのためにノートを新しく買って、持参してきた。
レッスン場所は、柏葉さんの友達が経営しているという、お酒を飲むバー。
日曜は定休日で使わないからと、場所を貸してもらっている。
毎週日曜の、午後二時から三時がレッスン時間だ。
用事があるときには休んで、柏葉さんと相談のうえ振り替えも可能とのこと。
それにしても、せっかくの休日にボランティアで講義してくれるなんて、柏葉さんは相当物好きだ。
柏葉さんは、日曜にデートするような相手はいないのかな。
ふと疑問に思う。
まあこれだけのイケメンだもの。
いないとしても、出来ないんじゃなくて、作らないんだろう。

