ドキリとした。

 柏葉さんは優秀なホストにもなれそうだ。きっと人気はナンバーワン。

 ルックスは甘いし、口調は心地良い。そして話し上手で聞き上手。
 そのうえこういう風に、不意にドキリとさせるテクニックを持っている。

「……柏葉さん、絶対モテますよね」

 プライベートが気になって仕方ないけれど、聞いてはいけない気がして遠慮していた。
 でも、彼女がいるのかどうかだけでも知りたい。

 いると分かったら、これ以上好きになるのをセーブできる。


「まあ、それなりにね。モテたいと思って意識してるから。子どもの頃はいじめられっ子だったし。高校まで、暗くてダサイって陰口叩かれてたクチでさ。大学デビューなんだよ、僕。地元を離れた機会に、思いっきりイメチェンしてやろうって思って」 

 驚いた。今の柏葉さんからは想像できない過去だ。

 それに、できれば人に話したくない黒歴史だろうに、にこやかに話してくれた柏葉さんに、胸がきゅうとした。
 誰もが羨む人生を送ってきたんだろうなと、勝手に想像していたことを、申し訳なくさえ思う。


「ってね、あえて弱味を見せるのも有効だよ。あなただから信頼して話せる、頼れるっていう、アプローチ」

「え、今の話は、嘘なんですか?」

「本当だよ。でも弱味って言ったのは、嘘。いじめられてたことは、強みになってる。いじめられっ子の気持ちは、いじめられっ子にしか分からないし、死にたいと思う人の気持ちは、死にたいと思ったことのある人しか分からないでしょ?」