「ありがとう。怖い、話しにくいって思われると、職業上致命的だからね。優しそうな雰囲気を醸し出せるように、気を付けてる。声質は持って生まれたものだから変えようがないけど、話すトーンは変えられるからね。いつも怒ってるように喋るイケボより、優しく穏やかに喋るだみ声のほうが、聞いていて気持ちいいって僕は思うから。笑顔で喋るとね、自然と声も柔らかくなるよ」
ああ、そうか。
やっぱり柏葉さんは、いつも笑っているように見えるんじゃなくて、いつも笑っているんだ。
下がった目尻に、上がった口角。優しくて穏やかな話し方。
この人にずっと話を聴いていてもらいたい。そう思わせるプロのカウンセラーだ。
「電話口でぺこぺこ頭を下げながらクレーム対応してるサラリーマンを見て、電話してる相手に見えるわけじゃないのに滑稽だって笑う人がいるけど、そうじゃない。実際に頭を下げてると、ちゃんと謝ってる声が出るし、横柄な態度で言葉だけで謝ってたとしたら、横柄な声が出る。だから、好きな人にはちゃんと笑顔で話しましょう。ね?」
にこりと笑う柏葉さんに、うっと息を呑んだ。

