やっぱり柏葉さんは狩人なんじゃないだろうか。
穏やかに気配を殺して、適度に間合いを取り、ここぞというときに機敏に仕留める。
そんなイメージが思い浮かぶ。
「じゃあ今日は、残りの五感……聴覚、触覚、味覚について、まとめていっちゃうよ」
『Lesson3:五感に訴えろ(聴覚、触覚、味覚編)』
チョークボードに今日のテーマを書いて、振り返った柏葉さんが言った。
「週一に一時間だけの講義って、意外と間に合わないなって気付いたから、ちょっと巻いていくね」
確かに。一時間の講義時間中、最初の二十分は雑談をしているし。
いきなり講義開始ではなくて、この一週間の成果と出来事を話して、聴いてもらうことから始まる。
講義に入るとビシビシと矢継ぎ早に質問を飛ばしてくる柏葉さんだけど、雑談タイムには殆ど自分は口を挟まず、ただ相槌を打ちながら、じっくりと耳を傾けてくれる。
さすがカウンセラーだなと思う。とても聴き上手だ。
「じゃあまずは、聴覚について。声の印象はとても重要です。顔が見えなくても声だけでイケメンって言われたり、声に恋に落ちるってあるじゃない? 声優っていう仕事もあるくらいだし。僕の声はどうかな?」
聞かれて初めて意識する。
柏葉さんの声は……正直言って、あまり印象には残らない。すごいイケボというわけでもないし、耳に残る特徴もない。
「優しそう……です」

