「ちょっと慎太郎、いつまでシャワーを浴びてるの!早くしないと学校に遅刻するわよ」
「判ってるって、それにもう出たよ」
よくもまあ毎日同じ事を言えるもんだと僕は感心する。
「生意気に朝からシャワーなんか浴びて、高校生のくせに」
「舞ちゃんは判ってないね。最近は男だって清潔にしないとモテないんだぜ」
舞ちゃんとは母の名前である。小さな頃から父がそう呼んでいたらしく、小さかった僕は母をそのまま名前で呼ぶ癖が付いていた、今更照れ臭くてお母さんとは呼べない。
「モテるって、あなたには和美ちゃんが居るじゃない?」
和美というのは隣に住む同じ歳の幼馴染で高校の同級生でもある。
「いつも言ってるだろ、和美は彼女なんかじゃないって、舞ちゃん」
「何言ってるのよ、昔から大きくなったら僕は和美ちゃんと結婚するんだって散々言ってたくせに」
流石にそれを言われると僕も困る、確かに小さかった頃そんな事を言っていた事はあったが、それはもう何年も昔の事だ。
「慎ちゃん、学校に行くよ」
そんな話をしていた矢先和美が僕を呼びに来た。家が隣で同じ高校という事もあって和美は毎日僕を迎えに来る。
「あら和美ちゃん、おはよう。慎太郎今用意してるから上がって待ってて」
「あ、おばさん、おはようございます。慎ちゃんまだ用意出来て無いの?まったくいつも鈍いんだから男のくせに」
「煩いな、お前は。大体頼みもしないのに毎日毎日迎えに来るなよ」
「だって~、一人で学校に行くのってつまらないんだもん」
「じゃあ、慎太郎、私は先に出掛けるから。和美ちゃん、後お願いね」
「あ、はい、判りました。いってらっしゃい」
父が死んだ後直ぐに母は生活の為働きに出ている。仕事は結婚前に働いていた会社で事務をしている。東京に本社があるその会社は地元でも従業員が多く良い会社らしい。
ただ会社で母がどんな仕事をしているのか、そしてどんな人が職場に居るかは良く知らなかったし、興味も無かった。
「はあ~、いつ見てもおばさんて綺麗だよね。とても慎ちゃんのような高校生の息子が居るようには見えないもん、うちのママとは大違い」
これも毎日同じ事を言うと感心する。
「まあ、若い時に俺を産んでるし、それに外で仕事をしてるからな。多少は気を使ってるんじゃない?色々と」
一応自分の母親を褒められると僕も悪い気はしない、それに舞ちゃんは僕にとって自慢の母親なのだ。ただ恥ずかしいので本人にも回りにもそんな事は言った事は無い。
「それにしたって・・慎ちゃんとなら歳の離れたお姉さんでも通用するよね」
「馬鹿言ってらあ、流石にそれは無理だろ。さ、行こうぜ」
「うん」