彼、って呼んでるその人は
女の子なのは頭では理解してる。
だけどそういうんじゃないの…
好きって気持ちはもう彼が何者だろうと
私にはこれっぽっちも問題じゃなかった。

深く考えたり悩んだりなんて
一瞬の事だった。
なによりただ、私の中の「好き」の感情を
恋以外の何にも例えられなかったから。




ある日彼がパーマをかけてきた。
私はまたそれにときめいて
横目で見ては頬が赤くなってしまうのが自分でも分かるくらい。


「やばい…かっこいい…!」

そして仕事も終わりかけた頃
スタッフルームの扉の前で会った。

『こんにちわ♪』

いつもなら、私から挨拶するところだけど
その時初めて彼から声を掛けられた。
それもものすごい笑顔で。


『こんにちわっ‼』

もう嬉しさで笑顔を隠せなかった。

「…やられた(笑)」

もう浮かれちゃったよ。
だって本当に笑顔が素敵すぎたから。
まぶしかった。

その後仕事中も思い出しては
にやけてしまう自分がおかしくて
落ち着け、落ち着けって言い聞かせるんだけど
でもそんな事さえも私には嬉しくてたまらなかった。


そしてタイムカードをスキャンして帰るとき
彼が居たの。

『お疲れ様です!お先に失礼します☆』

そうゆう私に
彼も同じように返してくれた。

そして抑えきれなくて振り向いて

『パーマかけたんですね!』

そう声をかけた。

『あっ!はい。かけました(ニコッ』

そう答えた彼。
素敵な声だなぁってその時思った。

『すごく似合ってます‼』

とんでもないハイテンションで褒めちぎった。

『ありがとうございます(ニコッ』

そんな会話だけど
すっごく嬉しかったの。
初めて交わした言葉は髪型の事だった。