白と黒のコーヒータイム

「お前って…仕事のセンスはあって評価もいいのに私生活はセンスの欠片もないな。」

「ありがと。前半部分は受け取るわ。」

「…後半部分を受け取れ。」

「それでもずっとオヒトリサマじゃないだけマシでしょ。」

苦し紛れの言い訳に近いが努力している分は褒めて欲しいと半分睨むように名村を見た。

すると名村はマジマジと正面から国見を眺め、物言いたそうに頬杖をつく。

「な、なに?」

空気が変わったことに耐えられず国見は思わず口を開いた。

一体今度は何を言われるのかと構えてしまう。

「前々から思ってたけど…国見って結婚願望強そうだよな。そんなに早く結婚したいのかよ。」

「結婚~?いや、そこは視野に入ってない。私がしたいのは安定した恋愛なの。」

思っていたような責めがこなかったことに安堵してカラカラと笑いながら国見はビールを口に含んだ。

何となくようやく美味しい食事が出来るような気がしてずっと狙っていた刺身に箸を付ける。

「は?何だ?」

「だから恋愛。1人の人とゆっくり流れるように寄り添っていきたいのよ。いいも悪いも当たり前に乗り越えていく安定した恋愛をね、したいんだ。」

箸を持っていない方の手で波の様な動きをするとその未来を思い描いて柔らかい笑みを浮かべた。

学生時代なら同じ時間を共有してからの付き合いになっていたのである程度は素を出せていたが、社会人になればほぼ初対面で付き合うかどうかの見定めをされる。

それはお互い様の話だが、やはり選んでほしくていい格好をしてしまうのが余計なのだ。

最初の無理が後々に大きな負担となって自分にのしかかってくる、これじゃ安定なんて夢の様だった。