白と黒のコーヒータイム

異性である名村に成りたい自分の像を重ねるのはやはり違う気もするが、いつか自分もそうでありたいと思うのは事実だった。

地に足をつけて、全てを安定させたい。

仕事ばかりできても駄目なのだ、恋愛だけできても駄目なのだ。

2つを手にしようとするなんてわがままだろうか、でも実際こうして目の前に手にしている人がいる。

自分もそうなりたい。

全面ガラス張りの店内から外の景色を眺めれば広々とした見事な庭園が目に映って癒された。

贅沢な空間だ、素直にそう思って心を温める。

「美術館って何となく敷居が高い気がしてなかなか足が向かないんだけど…来ると満たされる気がするね。」

独り言のような、同意を求めるような呟きに南村は微笑むだけだった。

コーヒーが美味しい。

いい休日になったな、そんな満足感を得て国見たちは美術館を出ることにした。

外へ向けて歩いていく中ふと横を見れば名村がいる。

接客業の国見には平日の休みしかない、まだ陽の高い穏やかな気候の中で私服姿の名村と並んで歩いていることを不思議に思った。

やっぱり休みが合う人も恋愛条件に入るのかな。

ふとそんなことを考えて自分の世界に入ってしまう。

仕事終わりの夜にデートしたり家にいくだけの付き合いでも特に不満はなかったが、こうして昼間から1日一緒にいるのも大切なことかもしれない。

でも、と過去の自分の気持ちを思い返してみれば苦笑いしか浮かばなかった。

たまにはということで相手の休みに合わせて強引に休みを取り一緒に過ごしてみても違和感しか残らなかったではないか。

1日一緒にいると疲れる。

そんな結論を導きだした結果、休日どうのこうのは条件には入らなくなった。