白と黒のコーヒータイム

静かで感覚が研ぎ澄まされそうな空間の中、それぞれが思い思いに芸術に触れて世界に入っていく。

作者は何を思いこのキャンバスに描いたのだろうか。

ところどころ有名な作品には背景が記されていた。

国見も口を閉じたままその作品を眺めて入り込んでみる。

金色に包まれた、恐らく実りの時期であろう畑で農作業をしている人達の絵だ。

この雰囲気からするに外国のものだと感じたが説明書きにもそう記してあった。

穏やかな風景、この絵を描いていた時期は豊作だったのだろうか。

楽ではない作業の繰り返しで生活もかかっている収穫の時期は心身ともに堪えるものがあるだろう。

その一番の薬が豊作だと国見は思い微笑んだ。

なんて人に感じさせる作品なのだろう。

暫く眺めていた国見は納得したように頷くと次の作品に足を向けた。

「何作か随分と熱心に見てた絵があったな。」

すっかり堪能した後で寄った美術館の中にあるカフェで唐突に名村が尋ねてくる。

その言葉に驚いて国見はすぐに返すことができず固まってしまった。

「なんだよ。」

「いや、何で知ってんのかなと思って。別行動だったじゃん。」

「別行動っつったって国見が何処にいるか位は把握するだろ。はぐれると面倒だしな。」

そう背もたれに体を預けながら手を伸ばしてカップを手に取る。

ゆっくりと堂々たる動作でコーヒーを飲む姿には余裕さえ感じられた。

「もしかして名村って彼女と一緒に見て回りたいタイプ?」

「いや、どっちでもいいな。特にこだわりがないから相手に合わせる。国見は一人で見たかったんだろ?」

「…うん。」