それは名村も同じ条件の筈なのだが、そんなことも感じさせない振る舞いを恨めしく思う。

「人間は欠陥があるから魅力的なんだって。おんぼろでも大丈夫だ、国見。」

「…あんたにもまだまだ欠陥がありそうだけどね。」

「昨日散々慰めてやっただろうが。」

「けなしたの間違いでしょ?」

やいやいと言いあっている内にエレベーターの扉は開き、流れに乗って乗り込んでいく。

国見の仕事スイッチはまだ入らない、制服に着替えてロッカーの扉を閉めた時こそ仕事モードになる時なのだ。

「いい加減紹介してよ、名村の魔性の彼女。恋愛のスペシャリストなんでしょ?」

「国見がもう少し恋愛の偏差値を上げたらな。」

「もう少しって凄く曖昧。」

「国見の偏差値の微妙さに比べたらマシだろ。」

「…スペシャリストが憎い。」

心底悔しそうに悪態をつく国見を見て名村は笑いをこらえる様に口元に拳を当てた。

扉が閉まればあとは静かに到着階を待つだけだ。

先に着くのは国見のフロアだった。

「じゃあね。」

「おう。」

簡単に言葉をかわして国見は降りていく、それとほぼ同時に隣のエレベーターも扉が開いたようで良く知った顔が出てきたのが見えた。

「国見さん、おはようございます。」

「おはよう、真柴ちゃん。」