私のその声に、日向はもちろん、色んな人の視線がこちらに集まった。
もしかして、さっき痴漢から助けてくれた人が江戸川?これ、スゴイ偶然じゃない?しかも同じクラスなんて。
私は勢いよく江戸川に近づくと、その綺麗な顔を見あげた。
うん、やっぱり朝の人。周りの女子の視線が痛いなんて気にしない。
私は息を大きく吸い込んだ。
「さっきはどうもありがとう!」
じ、と江戸川を見つめる。
江戸川は全く動じず、私を数秒見返すと、やがてニコリ、と微笑んだ。
綺麗だけど、やっぱり、と思った。その顔は作り物だ。
そしてその端正な口から出たのは、衝撃の言葉だった。
「誰かな?」
「……えっ」
ニコニコと笑う江戸川。
……え、忘れられてる?さっきあったばっかなのに?え、まじ?コーヒーくれたのに?――こちとら、一目惚れしたのに?
