「えっ?」
「こんなに冷たくしてるのに俺の何が好きなの?」
蒼空は表情をピクリとも動かさずにそう言った。
蒼空から私に何かを言うなんて初めての事じゃない?
何でそんなこと聞くのかは分からないけど、なんだか嬉しくて、私は興奮しながら口を開いた。
「まあ、顔はもちろん好きだけど……。蒼空って完全に冷たいわけじゃないから」
「俺、告白してきた奴をことごとく振っては大笑いする最低男って言われてるけど」
意外な自虐ネタに笑いながら私はうーんと唸った。
「それで好きでもないのにホイホイ付き合うよりはいいんじゃない?大笑いしてるかはともかく」
いつになく真剣な顔をする蒼空の眼を見つめる。
「でもしてないと思う。噂でしょ?それにそんな人が見知らぬ人にコーヒーをあげるなんて思えないし」
因みにあのコーヒーは飲まずに家に飾ってある。気持ち悪がられそうだから蒼空には秘密だ。
蒼空は暫く考えていたけれど、やがてミントの香りのするため息をついた。
「それだけでそんなに俺にアタックしてくると。よく挫けないよね」
「嫌いって言われた訳じゃないし。……あ、嫌い!?」
冷や汗を垂らしながら蒼空から視線を外す。
どうしよう、嫌いなんて言われたら泣いちゃう。
ドキドキしながらもう一度蒼空を見ると、彼も私から視線を外していた。
「……さあね」