電車の席は空いてなかった。しかたなく隅っこに寄って壁に体をあずけると、少し楽になる。
次の駅では人が大量に降りるから、そこでイスに座ろう。

それにしても痛い。どのくらい痛いかって言うと、超痛い。
満員電車だから身動きが取れないのが辛いな。


「――っ」


そう思った時。私は心の中で舌打ちした。
……お尻にかすかな違和感。ていうか、触られてる。

よりによってこんな時に……。いや、こんな時じゃなくてもダメだけどね。

微かに後ろを振り向く。案の定、中年のスーツを着た男が立っていた。たるんだ口元には笑みが浮かんでいる。

クソ、絶対私が怖がってると思ってる。違う、青ざめてるのも震えてるのも恐怖じゃない。腹痛なんだ。

今すぐにも叫んでやりたいところだけど、そんな余裕もないほど痛い。なんか今日は一段と痛い気がする。
居心地の悪さにむずむずしてると、痴漢はどんどんエスカレートしてきた。


――スカートの中に、手が入ってきた。