「そーらーちゃんっ!」


ギョッとするまもなく、その手は巻き付く。

びっくりしながら江戸川の背後を見ると、背の小さめな男子がいた。

すごい、江戸川に抱きつくなんて。羨ましい。


「やめろ、コタ」


江戸川はさして動じる様子もなく、その手を払う。コタってこの人のあだ名かな?仲が良いみたいだ。

コタと呼ばれた男子は、視線を私に移した。


「俺天木小太郎。よろしくな〜」
「よろしく、大浜華だよ」


うん、とニコニコしながら天木は頷く。


「知ってる。さっきの宣戦布告聞いてたぞ」


宣戦布告?

私は首をかしげて、ああ、と声を漏らした。
さっきの江戸川を絶対惚れさせてやるって言った事かな。うん、確かに宣戦布告って言われても無理はないかも。


天木は江戸川の頭をなでた。


「蒼空ちゃんこんなんだけど本当は優しいんだ、仲良くしてやってくれな」


その手をうざそうに避ける江戸川。
じゃれ合う2人がなんだか微笑ましい。


「うんうん、これから仲良くなるつもり」


そう言うと、僅かに天木は目を見開いき、そしてニカッと笑う。人懐こい顔に、笑顔が良く似合う。


「ははは!そっか、頑張ってな!」


天木はそう言い残すと、私たちに手を振って他の友達のところへ行ってしまった。

宣戦布告、か。
私は再び本を読み始めた江戸川に視線を移した。

――よし、頑張るぞ!

こうして、私と江戸川の(一方的な)戦いは幕を開けた。