シン、と教室が静まり返った。江戸川も微かに目を見開いて私を見下ろす。
「もうっ!華!!」
静寂を破ったのは愛理だった。
手首をグイッとひっぱると、あっという間もなく廊下へ連れ出されてしまった。
私達が教室を去った後、すぐに後ろで再びざわめきが起こった。誰も追いかけて来ないみたいだけど。
愛理は焦った様子で私を睨みつけた。
「ああああもう馬鹿華!知らないんでしょ、江戸川の性格!」
「性格?」
愛理は頷く。
「見た目とは裏腹に中身は超冷徹なんだよ。告った女をことごとく振っては泣き顔を見て悦んでるドS王子なの!」
必死にまくしあげる愛理。ひどい言われようだけど、本当にそうなのかな。
……私は見知らぬ人にコーヒーをあげるなんて、なんて優しい人だ、って思ったんだけど。
愛理はやれやれ、と首を降った。
「華は確実に江戸川をとりまく女子に目をつけられた。忠告するけど、あんまりしゃしゃると確実にいじめられるよ。だからもう関わらな、」
「どうすれば近づけるだろうか……」
「ねえ人の話聞いてる!?」
私の襟をつかむ勢いで愛理は顔を寄せてきた。焦る愛理が可愛くてちょっと面白いのは秘密だ。
「大丈夫、絶対愛理には迷惑かけないから」
「そういう問題じゃなくて〜」
ハア、とため息を落とされる。
だけどどうしても、諦められない。人を好きになったのは初めてなんだ。
……絶対、惚れさせてやるんだから。
