「千里ちゃん」
「はい?」
沖田さんは、じっと私を見ていた。
「山南さんの部屋で、何してたんですか?」
「え……お話をしていただけ、ですけど……」
「……そうですか」
なんだか浮かない顔の沖田さん。
どうしたんだろう。
「……あんな顔、久しぶりに見た」
「え?」
「なんでもありませんよ。
さ、日が暮れる前に買い物に行きましょう」
「はい……」
スタスタと歩き出した沖田さん。
置いていかれないように、私も慌てて歩き出した。
だけど、玄関に差し掛かった時……
「総司!」
後ろから沖田さんが呼ばれた。
振り返ると、そこにいたには息を切らせた平助くん。
「平助、どうしたの?」
「すぐに来てくれ、土方さんからの招集だ」
その言葉に、沖田さんの表情が変わった。
「分かった」と短く答えて、私の方に振り返った。
さっきの表情とは一変して、ニコッと笑った。
「今日の買い出しは中止みたいですね」
買い出しなら、私1人でも行けるのに……
首をかしげると、沖田さんは困ったように笑った。
この場所で、状況を理解していないのは、私だけだった。


