すると、山崎さんはトンッと私の胸元に指を立てた。
「ここから出る言葉が、正解だ」
「え……」
「心の底から出た気持ち、考え。
その言葉、本音が、きっと正解だ」
私の、本音……
「佐渡、難しく考えなくていい。
怖がらなくていい。
大丈夫だ、君は1人になったりしない」
君の言葉は、きっと正しい。
その言葉を聞いて、胸があったかくなった。
「俺は、伝わらないという方が大変な事だと思う。
相手に伝わらなければ、君のことを理解できないだろう」
そこまで話して、山崎さんは苦笑した。
「まあ、実際に行動に移すのは難しいだろう。
俺だって、時々分からなくなる」
「え……山崎さんも、ですか?」
「ああ、そうだ。
俺だって、怖くなる。
もしかすると、みんな思い悩んでいるのかもしれないな」
皆、思い悩んでる。
そう思うと、少しだけ胸が軽くなった気がした。
私だけじゃない。
だとしたら、もしかしたら私の悩みっていうのは、案外普通のことなのかも。
ああ、なんだか不思議。
私が長い間ずっと思いつめていたことを、この人はあっという間に紐解いてしまった。
「ありがとうございます、山崎さん。
まだ不安はありますけど、私なりに頑張ってみます」
そう言って、立ち上がり頭を下げた。
「夜分遅くに失礼しました、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」


