翌朝、私は蔵の中で目を覚ました。




屯所の中に入れるのは危険だから、今夜はここで休んでほしいと、山崎さんは申し訳なさそうに言っていた。




……今日、目が覚めたら、そこは自分の部屋であってほしかった。




今までの出来事が全て、夢であってほしかった。




だけど……




「夢じゃ、ないだ……」




ポツッと呟くと、蔵の扉が開かれた。




そして、お盆に湯呑を1つ置いた山崎さんが入ってきた。




昨日とは違って、今は普通の着物を着ている。




「茶だ、よかったら飲んでくれ」




そう言いながら、山崎さんは私の前に座りながら、湯呑を差し出した。




「ありがとう、ございます……」




私はそっと湯呑を受け取り、ひと口飲んだ。




あったかいお茶が、私の体を内側からじんわりと温める。




おいしい……