「佐渡!!」




土方さんに肩をつかまれても、私の叫びは止まらない。




揺さぶられても、呼びかけられても、止まらない。




声を荒げる中で、私は自分の考えを悔やんでいた。




私は、お祭りにでも来た気でいたんだ。




浮かれた気持ちで、歴史を目の当たりにできる、なんて……




ミーハー気分で、まるでドラマの参加者にでもなったつもりでいたんだ。




でも、違った。




ここは、ドラマの舞台なんかじゃない。




ここは……幕末だった。




志のために、戦う人がいる時代。




そして同時に、その志のためには、命を奪う事も許されてしまう時代……




私の知らない、でも確かな現実の世界。




架空の空間なんかじゃない、リアルなんだ。




気づくのが、遅かった。




人の死を間近で見て、初めて気付くなんて……




自分を見失いそうになって、涙が溢れてきた、その時……




「佐渡」




優しく名前を呼ばれ、ふわっと誰かに抱きしめられた。




誰……?




目の前には、男の人の肩。




浅葱色の肩の先には、山崎さんが見える。