「佐渡!!」
土方さんの声がするけど、私は動けない。
頭も真っ白になって、ただ立ち尽くすことしかできない。
恐怖が、体を支配していた。
逃げなきゃ殺されちゃうのに。
逃げ出す余裕すら、今の私には無かった。
「わあああ!!」
男の人が、すぐそこまで迫ってきた。
土方さんが刀を握りなおし、斬りこむ体勢に入った、その時……
―――ドッ
「っ!!」
私は、思わず目を見開いた。
男の人の左胸から、剣先が突き出ていた。
そして、同時に血が吹き出た。
「ぐふっ……」
彼の手から、刀がすべり落ちる。
だらん、と腕が脱力したかと思うと、そのまま倒れこんだ。
死んだ、の……?
恐る恐る足元を見ると、血がそこまで飛んでいた。
フッと顔を上げると、そこには山崎さんがいた。
刀をしまって、涼しい顔で私を見ていた。
あの日と同じ顔をして、彼は人を殺した。
初めて、彼と会ったあの日と同じ……
「っあ……あ……」
「大丈夫か、佐渡」
土方さんも、刀を仕舞いながら振り返る。
全身黒ずくめの山崎さんも、口元の布をグイッと下げて、心配そうに私を見つめる。
だけど、私はその場にうずくまってしまった。
「いやあああー!!」
狂気に満ちたこの場所で、どうにかなってしまいそうだった。


