「斬ったんだろう」




「え……」




相変わらず、足を止めず、私の方に振り返りもせず、斉藤さんはそう言った。




斬ったって、人を?




人を、殺したってこと……?




言葉を失った私を、斉藤さんがチラッと見上げた。




「何を今更驚いているんだ。

 これからお前が行くのは、そういう所だぞ」




「そういう所って……」




困惑する頭と気持ち。




だって、信じられないよ。




人が斬られるところなんて見たことないし……




もし本当なら、私はこれから死体を見るかもしれない。




でも、そんなの全然実感沸かない……




「着いたぞ」




そう言って降ろされたのは、池田屋の前。




見上げて、すぐに感じ取ったのは異様な空気だった。




何、これ……




私でも分かる、よどんだ空気。




今ここは、明らかに流れる空気が違った。




「でやああ!!」




「ぐわああ!!」




「っ!!」