「あ、そうだ!
土方さん、本命は池田屋です!」
そう言った瞬間、空気が変わった。
全員の顔が、引き締まる。
「それは本当か」
「はい、山南さんから伝達を受けて来ました。
同時に、山崎さんは近藤さん達の方へ伝達に向かっています」
「そうか、ご苦労。
お前ら、行くぞ!!」
「「おう!!」」
土方さんの声と共に、一斉にみんな走り出す。
勢いの邪魔にならない様に、スッと道を空けた。
次々と私の前を、隊士さん達が横切る中、斎藤さんと原田さんが足を止めた。
「佐渡、ご苦労だった」
「は、はい!」
斎藤さんの労いに、思わず背筋が伸びる。
その横で、原田さんが優しく微笑んだ。
「本当、ありがとうな。
屯所まで送ってやりたいが、あいにくこれからが勝負だからな」
「大丈夫です、1人で帰れますから」
「だめだ、もう夜も深い。
この暗闇で誰かに襲われたりしたらどうするんだ」
「斎藤の言うとおりだ。
だから……」
すると、原田さんが私の体に腕を回し、ヒョイッと担ぎ上げた。