「……佐渡さん、こんなこと本来は頼むべきではないのでしょうが……」
山南さんは、そう言いながらじっと私を見てきた。
「池田屋か四国屋。
どちらかなのか知ってはいませんか」
「!!」
真剣な目だ。
山南さんの気持ちは十分分かった。
だけど……
私の脳裏に、あの時の出来事が浮かび上がった。
初めて、土方さんと局長の近藤さんに会った時。
池田屋の事を話そうとしたら、突然現れた体の異変。
焼けるように熱くなった喉。
熱くて熱くて、息が出来なかった。
苦しかった。
池田屋の事を話すには、この苦痛に耐えなきゃいけない。
そう考えただけで、ゾッとした。
「どうですか、佐渡さん」
「……」
返事を促され、私は口を開いた。