高田くんの友達と中学校が一緒だった千紗は、みるみるうちに高田くんに接近していき、廊下で仲睦まじく話す姿を見るようになるまでに、そう時間は掛からなかった。

あたしは心の底から、千紗が羨ましくて仕方なかった。でもそれも、すべてあたしの為にしてくれてることなんだな、って思って、妬きたくなる気持ちに歯止めをかけて。

バレンタインは、そんな二人の光景に憧れを抱くあたしにとって、うってつけのイベント。
勇気を振り絞って、チョコレートを渡そう。放課後の屋上に、高田くんを呼び出した。

けれども、早起きして作ったはトリュフが、高田くんの手に渡ることは、なかった。彼には、れっきとした彼女がいたから。

フラれてあたしは、屋上で泣いた。


ああ、もう泣いてもいいんだな、って思えたとき、今まで溜め込んできた涙は洪水のように溢れ出して、とめどなかった。

千紗に協力してもらってから半年間。堪えていたものは、果てしなかった。目尻から流れ、頬を伝い、やがて足元には大きな、水溜まりを作る。