桜前線は、九州南部から複雑な曲線を描いて、日本列島を北上中。
今朝、そんなことを天気予報で聞いた。
帰り道。
けれども桜は、まだ咲かない。制服の袖を無理矢理伸ばして、ほんの僅かな暖を得る。自動販売機の温かい飲み物が、恋しい。寒いんだ。
あたしは準備室には寄らずに帰ることにした。
もしかしたら千紗は、あたしと先生が付き合っているのに先生が辞めることを知って、心配してくれたのかもしれない。
辞める事情はわからないけれど、もし傷付く結果になるのだとしたら、その前に別れた方がいいって言いたかったのかもしれない。
あたしの予想だから、わからないけれど。
『つばさ、柏村のこと、本気なの?』
もしもあたしが、生徒で、先生が先生じゃなかったら。
それでもあたしはやっぱり、上手に恋愛なんて、できなかったんだと思う。
だってあたし、先生のせいにしてる――今も。
あたしはこうやっていつでも、被害者みたく振る舞って、自分ばかり傷付いた気分になって。
こんなんで、まともに恋愛なんてできっこないよね。
「はぁ…」
濁り色のため息を吐いて、家のそばの曲がり角に差し掛かる。

