あたしがずっと体勢を、崩さずにいたから、先生は本当に寝てると思ったのかもしれない。
呆れたような重いため息を吐いて、去り際に一言、「春休みの宿題、罰として放課後準備室に取りに来い」と、呟いた。
ずるいです、先生。
あたしが行かないわけないって、知ってるんだもん。
授業が終わって、春休みの宿題についての説明があって、ひとりの女子が抵抗したのを皮切りに、教室中でブーイングの嵐が起こる。
その騒がしい声を背中に浴びて、先生は教室を後にした。
あたしはひたすら、窓の外に目をやる。
あのつぼみが開いて、ピンク色の花が咲いて、春の暖かい風が薫るようになったら。
教壇に立つ数学の先生は、先生じゃないのに。
「つばさー、また呼び出しくらってたね」
芽衣ちゃんに曖昧に笑い返して、あたしは最後まで開かれなかった数学のテキストをしまった。
放課後までに、ひとつでも桜の花が咲いたら準備室に行こう。小さな抵抗。そう決めたけど。
もちろん数時間やそこらで、花開くことなんてなかった。

