ベイビー クライ


言ってくれたらいいのに。

そしたら、あたしだけが、こんなにも苦しいんですか、って。
先生に、質問するのに。


『きっと今ごろお手隙だわ。辞める準備も完了した、って話してたし』


本当なら、周りなんて気にせずに今すぐにでも問いただしたい。

耐えられなくて、あたしはテキストを広げたまま、机の上に突っ伏した。
かつ、かつと、黒板の上を不規則に動くチョークの音だけが聞こえる。


「――おい、」


その静けさを打ち破る低くて穏やかな声は、意外にも、すぐ真上から響いた。

いつの間に、こんなに近くにいたのかな。
あたしに言われてる、とわかったけれど、顔を上げなかった。上げられなかったんだ、泣いてるから。


「お前なぁ…。そんなに俺の授業が聞きたくねぇか」
「っ、」


もしもあたしが、生徒で、先生が先生じゃなかったら。
こんな風に躊躇わずに、素直になんでも言えるのかな

もしもあたしが、生徒で、先生が先生じゃなかったら。
こんな風にあたしに、隠したりしなかったでしょう?