「駿河さん、体調が悪いようなら保健室に行ってきなさい」
厳しい口調で言った体育教師に、あたしは黙って頷く。
体育が終わればお昼休み。その後が、数学。
教室で、居心地の悪い時間を過ごすよりなら保健室に行こう、そう思い、立ち上がろうとした。
「でも養護教諭が今日お休みだったわね。職員室に行けば誰か……」
体育教室はコート上に目を向けながら、「あ、そうねぇ…」なにかに閃いた表情を浮かべる。「数学準備室に柏村先生が」
心臓が、どきりと飛び跳ねる。
柏村、先生…?
「…っ」
リバウンドのボールがすぐそばに転がってきたけれど、そんなの、目で追う余裕なんてなかった。
見過ごしたボールを拾ってコートに投げたマユの姿が、目の隅に入る。
「きっと今ごろお手隙だわ。辞める準備も完了した、って話してたし」
辞める――?
「…え…?」
小さく発した自分の声は、ファールを伝える体育教師の笛の音にかき消される。
頭の中が真っ白で、膝に置いた拳が、かたかたと、震えた。

