「うちのクラスの高田と付き合ってるって、噂になってたよね」
体育館中を隈無く見渡したマユは、最後にあたしと目を合わす。「今度はどの子だろ、って思ってね…」
“今度は”?
「それ…、どういう意味?」
マユは、振り返ると校庭を映し出す窓に目線を上げた。現在、合同体育で男子たちがサッカーをやっている。
賑わってる声だけが、聞こえてくる。
「高田さぁ、顔は良いけど女遊び激しいから。サッカー部の先輩にも目ぇ付けられてるらしいよ」
再び膝の上に寝そべる。
けれどもマユの顔は、先ほどよりも一層深刻そうだった。
「…そ、そうなの?」
「うちのクラスにも泣かされた子がいるんだよ」
高田くんにそんな噂があったなんて。
全然、知らなかった。
サッカー部の人気者で、いつも練習に励んでいて。あたしはその姿に、恋したのに。…たぶん、千紗も。
だけどそれは、上辺の顔だったの?
「そこの見学の二人、静かにしなさい」
審判をしていた体育教師の影が、いつの間にかすぐ目の前にあって、あたしとマユは同時に肩をすくめた。

