ベイビー クライ


風邪だと言ったら、疑われることもなく、あたしは体育を見学することを許された。
教師も騙せるほど、饒舌、とかそういうことじゃなくて。

きっと、よっぽど顔色が悪かった。


「あれー?つばさも見学?」


試合が始まったコートの隅に、体育座りをしていたあたしはふと、顔を上げる。


「う、うん…。マユも?」
「うん!てか、ジャージ忘れて来たんだけどね」


去年、一年生のときに、同じクラスだったマユ。
二年になって、あたしは四組、マユは三組になった。


「でも寝不足だからちょうど良かったかな」


あたしの隣に座ったマユはヒヒッと子供みたいに笑って、膝の上に腕を組んでぴったりと頬を乗せた。「ここで寝るにはちと寒いなぁ」


むくっと起きて、腕を擦ったマユに同意する。
たった今、試合が行われている最中のコート上は、ここよりも数倍、暖かそうだ。


「四組の安原千紗って、どの子?」


前触れもなく、マユの口から出た千紗の名前に、あたしは正直に戸惑った。「……なんで?」


首を伸ばしたマユは、コート上をキョロキョロと見回す。