ベイビー クライ


次の時間は、三組との合同体育。
教室に近づくたびに、ジャージに着替えたクラスメートたちと忙しなくすれ違う。

もう、間に合わない。
見学でいいや。諦めて、あたしは制服のまま踵を返し、体育館に向かった。
諦めたら、楽になった。
胸の中に迫り来る焦燥が弾ける。


『やめる?』


バレる前に、楽になってしまえ、ってこと?
びくびくしながら一緒にいるよりなら、忘れた方が、楽なのかな


『今なら、まだ、全部俺のせいにして、引き返したっていいんだぞ』


初めて話し掛けられた声色も、夕焼けに染まる横顔も、教壇の上では見せない柔らかい眼差しも。

左手の仕草、曲げる首の角度、重なる唇の感触。


「…っ先生…」


先生は、引き返したって平気ですか?

あたしは、
忘れるどころか思い描くだけで鮮明に、胸を焦がすのに――


「集合ー!女子はバスケットね」


体育教師が笛を鳴らす。
よろめく足で、なんとか体育館の入り口までたどり着いたら、視界に入るクラスメートたちの濃紺のジャージが霞んで見えた。