居ても立ってもいられなくなって、あたしは次の休み時間に数学準備室へ向かった。
教室を出るとき、後ろの席から千紗がこちらを見ているような気がしたけど、あたしには見つめ返す勇気が、なかった。
「…っ失礼します」
気が焦る。
ノックと同時に出た声は震えた。
「あら、駿河さんどうしたの?質問?」
あたしを出迎えたのは、柏村先生ではなく、年配の女の先生で。「…あ、あの…」勢いで扉を開けてしまったことを即座に後悔する。
女の先生を見る振りをして、準備室の奥を探す。
先生、先生…
心の中で呪文のように繰り返すと、のっそりと段ボールを抱えて、こちらに歩み寄ってくる人影が見えた。
「あー。俺、呼びました。午後の授業のことで」
ぽりぽりと頭を掻きながら、「悪いな、駿河」さして悪気もなさそうに、平坦な言い方をする。
女の先生が見ていないことを確認してから「どーした?」口パクで言い、段ボールを床に置いた。
女の先生は、特に気に留める様子もなく、「後でその段ボール、引き取りに伺いますね」テキストを抱えて準備室を出てゆく。
あたしたちを見る他人の目が、妙に気になってしまう。

