部屋から外へ、ほんの数十歩分の区間の全力疾走。
それなのに、息が切れて蒸気がのぼる。
「かっ、柏村先…、」
先生、そう言い切るよりも先に、あたしを見つけた柏村先生は、手首をぐいっと引き寄せた。
痛いくらいに。
「…ガキのくせに出会いを求めるなんざ生意気なんだよ」
「先生、あたしを迎えに来て、くれたんですか」
引かれて足を動かしながら、半歩先を歩く相手を見上げる。
半分まで短くなった煙草を唇に挟んだまま、言葉が発することはない。
『沈黙と肯定は、ニアリーイコール。』
先生、
信じても、いいですか?
ね、
胸の奥から焦がれるような焦燥が押し寄せてきて、「…っ先生、」つい大きめの声でそう呼んでしまったら、
「街中でその呼び方はダメだ」
勢いよく体を反転させた相手は、あたしの口を手のひらで塞いだ。
とたんに、あたしの体中に籠もった湯気は、逃げ場を求めて頬を火照らす。
「ま、その呼び方ももう少し、聞いていたい気もすっけど」

