「つばさちゃん!?あれ、飲み物は?」
テーブルの上にメニューを置くのとほぼ同時に、あたしは部屋を飛び出していた。
それまで耳について仕方なかった、お世辞にも美声とはとても言えないようなロックから、解放されたかったわけじゃない。
なんで、なんで
『……ううん、いないよ』
どうして
そんなこと言うのよ
悪びれた様子はさらさら無い、千紗のさっぱりとした返事が、頭の中で反芻する。
高田くんはどうしたの?
疑問が募る。
もう関係ないんだ、って割り切ってみても、訳がわからないもんだからひとりでに頭がもやもやでいっぱいになるんだ。
『行くのか?……駿河も。』
先生、
なんであたし、こんなとこ来ちゃったんだろ?
あたしの狭い心と頭で考えただけでは、ちっともわからないよ。
受付まで走って来て、胸に両手を当てれば、唇を割って短い息が漏れた。
外は、既に薄暗くなり始めている。
暖かい春の色にはまだ遠い、冷たさを帯びた寒色の風が吹く。

