「これからあたしたちカラオケなんですから!」
ずんずんと足音を響かせて入室した芽衣ちゃんは、柏村先生を睨み見た。
柏村先生に手を取られていたシーンは、寸でのところで目撃を免れたみたい。
「カラオケ?」
「そ!他校の男子も来るんですよー?」
だから急がなきゃ、とアピールするように、芽衣ちゃんは携帯を開いて確認する。
ただほっとして、まだ温もりが残る指先を擦ったあたしは、「他校の男子…?」柏村先生の片方の眉がぴくりと、器用に動いたのを見た。
「みんなもう集まってるって!つばさ、早く行こう」
芽衣ちゃんに腕を引っ張られ、つんのめりになったあたしの耳に、「行くのか?」ようやっと聞き取れるほどの声が届いた。「……駿河も。」
――先生?
「当たり前じゃないですか!さ、行こう行こう」
「め、芽衣ちゃん…っ」
強引に連れ去られる、と称してもおかしくない格好で、振り切るわけにもいかずに扉の外へ足を進める。
振り向くと最後に、何か言いたそうに前髪で目元を隠した柏村先生の顔が、見えた。

