「とにかくっ、数学準備室にちゃんと迎えに行くから!」
曖昧に笑うあたしを余所に、芽衣ちゃんはそう言って、なぜか随分と自信有りげに笑ってた。
――放課後。
それでも“迎えに行く”なんてのは話半分で、おそらく、うきうきしながら芽衣ちゃんは、先に帰ってしまうだろうな。
そして明日になったら楽しそうに、カラオケでの話をあたしにするだろう。芽衣ちゃんとは、そんなちょっぴり、どこか抜けたところが可愛い。
「――失礼しました」
数学準備室に向かう途中、職員室から出てこちらに歩いて来る女子生徒の姿が見えて、あたしは咄嗟に俯いた。
だけど廊下には、身を隠せるような窪みなんてないし、狭いのでいくら身構えたって、自然と顔はばれる。
「……っ」
千紗はすれ違い様に、こちらを冷たく一瞥した。
千紗とは、バレンタイン以来、もう一ヶ月以上会話してない。説明をして欲しいし、やりきれない想いをぶつけたいとも思ったりした。
それでもあたしが理性を保って、千紗との距離を置いておけるのは、あの人との出会いがあったから。

