君とのキスの意味

藤田さんが異動前は、2ヶ月に1回ぐらいだったから、まずはそれが目標か。

そんな不毛な事を思いながら、俺は出かける準備をした。


─つ、疲れた・・・

何とも言えない疲労を、心身ともに感じながら、会社でよく利用している居酒屋に辿り着く。

「「「いらっしゃいませ!」」」

「こんばんは!」

お店の人の明るい声に、少しだけ気分が浮上する。

「塚本さん、いらっしゃい!いつもの中の座敷だよ」

大将が、目尻にシワを寄せて笑う。

「お世話になります」

と軽く頭を下げながら、奥に向かう。

うちの会社でよく使う、細長い造りの座敷。お店のつきあたりまで行くと、広い座敷があり、その手前にあるから『中の座敷』なんて言っている。

「一時間ほどの遅刻か・・・」腕時計を見て、そう呟いた。

一ヶ月くらい前に、社内に新たに野球チームができた。

監督は、野球好きで有名な川下( かわした )総務部長。キャプテンは高野主任。副キャプテンは営業二課の津村( つむら )主任。

今日はその野球チームの、“ 発足式 ”と名付けた飲み会をしている。