─翌日、土曜日。

俺は、またあの本屋に来ていた。心のどこかで、水野君に会える事を期待していたのかもしれない。

先週と同じような時間に来て、一時間ほど、立ち読みをしたりしながらウロウロしてみたが、水野君に会う事はなかった。

「何やってんだ、俺・・・」

そう小さく呟くと、手にしていた雑誌を戻す。帰るか・・・

本屋を出る。土日はお客さんも多いから、お店の裏手にある第2駐車場の方に、車を停めていた。

駐車場に向かって歩いていたら、ポケットに入れていたケータイが震えた。

立ち止まって、ケータイをチェックする。

メールか・・・後でもいいか。と、ポケットにケータイを戻した時、人の気配と「あっ!」と言う女の人の小さな叫び声。

顔を上げた時には、すぐ目の前にいた女の人と肩がぶつかっていた。

「「すみません!」」

ほぼ同時に謝って、お互いの顔を見た。

うん?見た事ある顔だと思った。仕事がら、人の顔は、一回会っただけの人でも覚えるようにしている。もちろん、100%ではないけれど。

驚いて、少し見開かれた目。はっきり言って、かなりの美人だ。