君とのキスの意味

「いえ、村瀬君なら充分にできます。もう一段階成長する為にも、いい経験になると思います。自宅も、営業所の方が近い」

高野主任は、ニヤッと笑った。

「村瀬君は、違う心配をしてほしいだろうな。お前も、どう答えるかちゃんと考えておくんだな」

そう言って高野主任は、俺の肩を叩いた。

村瀬君と元カノは、同期だったりする。

入社して新人研修が終わり、村瀬君は、うちの営業アシスタントに配属された。

配属された当初から、鈍い俺にも、わかりやすい形で、村瀬君は好意を伝えてくれた。

村瀬君は、いつも同じようにきれいだし、仕事の覚えも早かった。

入社2年目で、まだまだ頼りなかった俺を、すぐにしっかりサポートしてくれるようになった。

仕事のパートナーとしては、信頼も尊敬もできる。

でも、それ以上の感情はどうしても湧いてこない。

村瀬君からの誘いを、俺は、何となくごまかしながら断っていた。

同じ職場で毎日のように顔を合わせるのだから、村瀬君も、それ以上は踏み込んでこなかった。