君とのキスの意味

近付いてきた女性店員に、そう告げる。

「はい!ご予約の方でしたら・・・」

「どこの座敷にいるか聞いているので、案内は大丈夫です。奥の座敷に行かせてもらいます」

そう言ってニッコリ笑うと、店員は少し頬を赤くした。

「どうぞ~!」

店員が手で示した方に進む。前を通る時「ありがとう」と頭を軽く下げる。

「どういたしまして!」

店員の少し上擦った声が、背中に届いた。

「ここか・・・」

個室が並んだ奥に、水野君達のいる座敷があった。わかりやすい場所で助かった。

出入口の襖の前に膝をついて座る。

目を閉じて、「フゥ~」とゆっくり息を吐く。自分の中で、カチッ!と何かのスイッチが入ったように感じる。

目を開け、襖に手を掛ける。

水野君、帰ろうか。君には、伝えたい事がある。

心の中で、そう呟く。

「失礼します!」

声を張った後、スッと襖を開いた。


─3人で店を出て、ホッとする。

一瞬、藤田さんを生け贄として、置いてこようか、なんて思った。けど、小竹君とも約束したし、俺と水野君を心配してくれているのもわかったので、やめておいた。