そうだ。芝生広場の前で、白石さんが待っていたんだ。

「一緒に帰ってきた2人を見て、何か特別な空気を感じました。とても、私なんかが入る事のできない・・・気が付いたら呼んでました。『陽平さん』て」

あの時、急に白石さんに名前を呼ばれてびっくりしたけど、そうだったんだ。

「私と塚本さんが、名前を呼びあっている事に気付いていたら、水野さん、何か誤解したかもしれません。話す事ができたら、私も謝っていたと、水野さんに伝えてください」

水野君は、気付いていたのだろうか?だから、宮前が話す前から誤解さていたのだろうか?

それからしばらくして、お腹いっぱいになった俺と白石さんは、店を出た。

待ち合わせをした本屋の駐車場まで、白石さんを送る。

「塚本さん、ありがとう!」

車から降りた俺に、右手を差し出した白石さん。

「こちらこそ、ごちそうさま!」

右手を差し出して、軽く握手をした。

ニッコリ笑って、白石さんは俺に背を向けて歩き始めた。その後ろ姿は、とても清々しく感じた。

俺は、11月の青い空を見上げた。今日は晴れて、小春日和だ。

やっと、前に進める─

その事を、胸の中で噛みしめた。