「左側の扉だけ開いたみたい」 状況を説明しながら振り返ると、赤野はまだ谷原の死体を見つめていた。 「赤野君……」 小さく名前を呼ぶと、無表情の中に困惑の色が見えている赤野が此方に歩み寄って来た。 「……行こう」 その言葉は、まだ気持ちが揺らいでいた。 赤野の恐怖心や不安は私も同じだが、ここで同意するのは意味が無い。 だからと言って『頑張ろう』なんて無責任な言葉を簡単には言えない。 結局、何も言葉を掛けられないまま、赤野が左側の黄色い扉を開けるのを見つめていた。 「……何だろう、あれ」