この場に似つかわしくない突然の静寂に、私と赤野の笑顔が消える。
「な~んてね」
アルラウネはおどけた後、左胸に深く突き刺さったナイフを引き剥き、後方に投げ捨てる。
ナイフはミヤビの足元に転がり、いつの間にか私のポケットから落ちていた香水の丸いビンにぶつかった。
ミヤビはアルラウネに気付かれない様、ナイフを手に取り、こめかみに刺さったイバラを切断しようと切り始める。
「私、心臓無いのよ」
アルラウネはゆっくりと唇の両端を上げ、美しい弧を描く。
左胸の深い刺し傷は、細胞分裂を繰り返して塞がっていく。
アルラウネは不死身なのかもしれない。
傷が完治した左胸を指先でなぞり、アルラウネは再び赤野の唇にぐっと自身の唇を近付ける。



