大きく心臓が跳ねた。

赤野と反射的に、声のする方へ視線を向ける。

「な、に……?」

私たちを見て笑うのは、人ではなかった。

大きく咲いた黒バラの中心から上半身が生えた裸の女のバケモノだった。

その女が笑いかける視線の先には、イバラに巻き付かれた白い少女。

そのイバラは傷付けるわけでも、無理矢理拘束しているわけでもなく、守るように絡み付いて、座っている白い少女の体の周りを蠢いていた。

……私はその少女を知っている。

「……ミヤビ、ちゃん?」

幼い頃の夢を見るまで忘れていた白い少女の名を呼ぶ。