『ちょっと、まってよッ!』

少女は子猫の後を追ったが、森の入り口の前で足が止まる。

『……どうしよぉ』

母親に迷子になるから森で遊んではダメだと言われているので、少女は森に入ったことが無かった。

大きく育った木々のせいで太陽の光が遮断され、昼間だというのに森の中は薄暗かった。

子猫は森の中を少し入った所で、少女が来るのを待っていた。

少女は自宅がある方向と森の中の子猫を交互に見つめたあと、持っている袋の中のリンゴに視線を落とした。

『おねがいだから、そこから、うごかないでね』

少女は意を決して、母親にダメと言われている薄暗い森の中に踏み込んだ。

ミャァ~……