宝石の様な赤いハートのプラスチックの飾りが付いたピンク色のヘアゴムは少女のお気に入りだった。

子猫は頭を撫でる度に目の前で揺れるハートの飾りに噛り付いて、手首から外そうとしていた。

『これはダメだよ!』

少女は咄嗟に手を引っ込めるが、子猫の動きの方が早く、器用に爪を引っ掛けて手首からヘアゴムを取られてしまった。

『あッ!かえしてッ!!』

少女が大きな声を出して子猫に手を伸ばすと、ぴょんっと後ろに飛び、ヘアゴムをくわえた子猫は少女と距離を取った。

そして子猫は森の入り口の前に座り、尻尾をクネクネと揺らしながら少女を見つめる。

『おねがい、かえして……』

少女が近付くと、子猫はミャァと鳴いて森の中へ消えてしまった。

まるで捕まえてごらんとでも言っているかの様だ。