ここに来る道中、赤や黄色の小花が無くなっていた理由も黒バラのせいだろう。
小花の蜜を吸い取り、悪魔の様な黒バラは他より大きく咲いていた。
よく見ると、いくつか大きく咲いている中でひとつだけ踏み潰した跡があった。
茶色く変色しているわけではないので、最近踏み潰されたものだろう。
花びらに靴の裏の跡が付いている。
だとすると、ここ最近、人が居たことになる。
もしかすると、母親の言う通り、探している少年が居るのかもしれない。
靴の裏の後をじっと見つめていると、花びらが小さく揺れた。
風が吹いたわけでもないのに、揺れた事に驚いていると、更に驚くべき事を発見した。
花びらに残された跡が、ゆっくりと消えていくのだ。
同じ所を見つめ過ぎて錯覚を起こしたのかと思ったが、さっきまであった跡は綺麗に無くなっていた。