下を向く私の顔を覗き込もうとする赤野の気配を首元に感じ、私は顔を背けた。
「そりゃ分かるわよ。だから私は」
「手首を切ろうとしたんでしょ?」
赤野は私の言葉を遮って、冷たい声をかぶせてきた。
怒っているのか、呆れているのか、感情の読み取れない声に戸惑い、肯定する言葉すら言い返せなかった。
静かになった私の様子を見て、赤野は私を拘束する腕の力を緩めたが退かす事はしなかった。
「折笠さんは責任感が強いから、きっと俺が居なかったら、あのままボトル蹴飛ばして廊下で甲冑が来るのを待ってたんじゃない?……殺されるために」
赤野の言葉は、未来が見えている様に確信的だった。
赤野が居なかった時の事は考えていなかったが、おそらくそうだった場合、私は赤野の言った通りの行動をしていたかもしれない。
「俺が居たから、自殺することは変わらないけど、自分の手首切った血で仕掛け解いて、俺だけ逃がそうとしたんじゃない?」



