「わかった」

そう言うと、甲冑はまだ動き出していないのに立ち上がる。

部屋の中央にある丸テーブルに近寄る赤野を目で追う。

「動かないと思うけど……」

赤野は一輪の黒バラが挿さった花瓶に手を伸ばしていた。

「……やっぱり動かなかった。もし動けば西の部屋の血を注げば良いと思ったんだけど」

赤野は花瓶を掴んで持ち上げようとするが、テーブルに固定されている為、部屋の外に持ち出す事は出来ないようだ。

カシャ……カシャ……カシャ……

甲冑の足音が少しずつ小さくなっていく。

「行ったみたいね……」